総評:アーティスト部門(一般部門)審査にあたって(第2回印西国際音楽コンクール)

この度、第2回印西国際音楽コンクールアーティスト部門(一般部門)の審査を担当いたしました伏木唯です。
出場された皆さまそれぞれに個性を存分に発揮した、素敵な演奏を聴かせていただき、ありがとうございました。

動画審査は、同じ環境で演奏するステージ演奏での審査と異なり、それぞれ撮影する場所が異なる(ピアノの方は演奏する楽器も)、ある意味独特な審査です。ステージで奏でるときに音にこだわるのと同じように、録音では、演奏時の音作りと録音として出てきたときの音、それぞれへの意識が試されるように思いました。常に自分が表現したい音、響きが鳴っているかに耳を傾け、音源のクオリティー、ときには出場のハードルが低い録画審査ながらも、服装やステージマナーにも意識を向けていただけたらと思いました。

また、選曲もコンクールを受ける上で重要なポイントの1つとなります。心から好きで、インスピレーションが自分の中から湧いてくるような作品を選曲すると、より説得力のある、インパクトの強い演奏が生まれるのではないかと思います。

なかには数曲演奏された方もいらっしゃいましたが、曲数が増えるごとに、音の色彩の豊富さがより重要となります。特に普段ステージ上では感じ取っているはずの音色差が、音源では希薄になってしまうケースが大変多く、聴く側にその違いや表現が伝わるよう、よりはっきりと自分の中で意志を持って演奏していただければと思います。常に自分がどのような響きを求めているか、曲を通して何を伝えたいかを深く考えて、音楽作りに励んでいただければ嬉しいです。

また、一部の楽器を除いて、多くの方が伴奏を伴う作品を選択されていました。2名以上での演奏は、すなわちアンサンブル、一緒に音楽を奏でるということです。時々、ソリストとピアノの方の音楽の方向性が違うなど、話し合いをあまりされなかったのかなと思う演奏も見受けられましたので、伴奏や室内楽などで共演する際は、お互いの音楽を尊重し、歩み寄りながら音楽を作っていただければと強く感じました。

これらの点を踏まえてみると、今回第1位に入賞された2名は、選曲においても作品ごとの方向性の違いを見せてくれる演奏で、また、録画品質もハイクオリティでした。国外ではオンラインコンクールが多数立ち上がっており、録画審査について慣れているのかもしれませんが、今後、同様のコンクールへ演奏動画を提出される際に今回の出場経験を参考にしていただければと思います。

これからも常に音楽を奏でる喜びを忘れずに、前向きに音楽に向き合ってください。また、皆さまの心のこもった演奏を聴かせていただけることを、審査員一同楽しみにしております。

第2回印西国際音楽コンクール
アーティスト部門(一般部門)審査担当
伏木 唯