総評:プロフェッショナル部門審査にあたって(第2回印西国際音楽コンクール)

この度、プロフェッショナル部門の審査を担当いたしました今田篤です。印西国際音楽コンクールでは第1回に引き続き、皆さまの熱演を聴かせていただきました。

本部門は初の開催にも関わらず総勢70名超の応募があり、非常に注目度の高いコンクールであることが証明されました。これだけの演奏を聴くことは気力と体力が求められましたが、聴き終わったあとには不思議とエネルギーに満ち溢れ清々しい気分になりました。出場者の皆さま、お疲れ様でした。そして素敵な演奏をありがとうございました。

今回はピアノやヴァイオリン、木管といった楽器独奏だけではなく、室内楽や合奏での出場も多く、バラエティに富んだ内容になりました。また、ハンドベルやアコーディオン、小太鼓といった珍しい演奏もあり、コンクールの場ということを忘れて楽しませていただきました。

本コンクールは審査員が専攻外の演奏も審査する点が特色となっています。打楽器において専門審査員は今回おりませんでしたが、マリンバ演奏が審査員全員から高い得点を獲得、第2位に入賞し、審査員の専門性によって大きく審査結果が変わることはなかったように思いました。出場者の皆さまにおかれましては、『異種格闘技戦』である点も踏まえ、専門的な技術に拘りすぎず、より説得力のある演奏を目指していただきたいと思いました。

最長15分の演奏動画は短いようで結構長くもあり、その間、聴き手を飽きさせないことは並大抵のことではないと思います。ライヴ演奏審査とは鑑賞状況がまったく異なる動画審査ではなおのこと難しく、自分の解釈や考えをより明確にして、大袈裟なくらいの色濃い表現が必要です。そのためにも広いホールで演奏するイメージをもって日常の練習に取り組んでいただくといい演奏に結びつくはずです。

本コンクールは録画審査のかたちをとっていることで、見方によっては出場そのもののハードルは低いのですが、こと出場者のレベルが高いことが予見された本部門においては、録音品質に関して最高の状態で提出していただければと思いました。

演奏のクオリティが高いにも関わらず、録音状態が原因で点数が伸びなかったケースが少なからずありました。演奏で差がつかず録音の質で差がついてしまうことは、日々演奏に打ち込む努力とは関係ないかたちで結果が出てしまい、非常に残念なことです。

映像部分についてはスマートフォンで撮影しても全く問題ありませんが、音声はダイナミクスレンジを制限・自動調整されてしまう、会議録音向けの設定となっていることがありますので、今後、他のコンクールで録画審査に臨む際はその点についてご留意ください。もちろんホールで演奏し、備え付けの三点吊りマイクで録音することや、本格的な収録環境を用意することが好ましいですが、そうでなくてもスマートフォン向けの外付けステレオマイクを使用、あるいはICレコーダーで別撮りした音源を使用するなど、各自で可能な限り工夫していただきたいと思います。

また、出場者間のレベル差が大きい点についても考えさせられました。リサイタルの開催や協奏曲の共演機会を入賞特典として、あるいは順位と関係なく演奏機会が用意されるプロフェッショナル部門は、部門名称の通り、すでに演奏活動をなさっている演奏家も多く出場しており、必然的に審査員が求めるレベルも高くなります。

もちろん、本コンクールの特色である、演奏家による審査講評を求めて出場されるケースもあるので、入賞後の活動展開を支える実力をすでに有しているか否かを全出場者へ一概には求められませんが、本部門同様、高いレベルの審査員が揃う一般部門(アーティスト部門)との併願出場も可能なので、プロフェッショナル部門への一本賭けに拘らず、出場部門の選択についてもご検討いただけたら幸いです。

以上についてはいずれも出場者の演奏クオリティが高いゆえに、よりいっそう踏み込んだかたちで求めたくなることなので、今後の活動の参考になるようでしたら嬉しいです。

さて、次回のプロフェッショナル部門の〆切は2023年1月31日とのことです。審査員一同、皆様の演奏を再び聴かせていただけることを心待ちにしております。

第2回印西国際音楽コンクール
プロフェッショナル部門審査担当
今田 篤