総評:第1回印西国際音楽コンクール審査にあたって
今回、記念すべき第1回印西国際音楽コンクールは初回であることに加え、ヤングアーティストおよび愛好家部門の二部門に限っての開催であったにもかかわらず、6つの国・地域から予想以上の数の出場申込みがあり、また、東南アジア地域土着の民族楽器での演奏があるなど、多様性に満ちた盛り上がりを見せてくれました。
審査員の皆さま方におかれましては、たいへん長丁場な審査をお引き受けいただき、この場を借りて深く感謝を申し上げます。
さて、本コンクールはYouTubeへの動画アップロードによる録画審査である都合、その審査状況については公開されませんので、今回、総評といったかたちで皆さまへ全体模様などをお伝えできればと思います。
まず、コンクール総評としてお決まりの言葉ではありますが、客観的な事実としてクオリティの高い演奏が多かったことに加え、熱意の高さを感じられ、また、多重録音による出場といった録画審査ならではの演奏内容もあり、通常のコンクール審査とはひと味異なる審査会となりました。
とりわけ、愛好家部門では「音楽への愛情」を感じさせる、真摯かつ誠実な演奏が多かったとの声が審査員から上がりました。
その一方で、演奏レベル如何ではなく、撮影状態の不安定さで「損」をしている提出動画も複数見受けられたとの意見もあり、出場者の皆さまにおかれましては、録画審査が多用される時代の「ステージマナー」についてご一考いただければと思います。
具体的な声としては以下のようなものがありましたので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
① アングルが揺れるので、カメラを手持ちにするのではなく、三脚などを使用してほしい。
② 音割れが発生することがあるので、その場合はマイクの設定を見直し、できるなら楽器・演奏者からやや離れた場所にマイク・カメラを設置した方がよい。
特に①については、審査時に画面酔を引き起こすこともありますし、ハンドバッグに収まるコンパクトな三脚を使用するといったお手軽な方法でもいいので、ぜひ工夫していただきたいと思います。
肝心の演奏クオリティにおいては、金賞ならびに第1位に入賞した方々は「ワンランク高い」ことが合計点数に表れました。
とくにヤングアーティスト部門では、複数の上位入賞者が完全にコンクール慣れしていると見受けられた一方で、「この年齢でこれだけ弾けるのはすごい」の粋を超えて、演奏としての「深み」や、リスクをとってでも「積極性」をみせて満足させてほしい気持ちも湧きましたが、それを求めたくなるほど純粋に演奏のクオリティが高かった証左でもあります。別の演奏会場でふたたび演奏を聴く機会もあるかと思われますので、ぜひ今後も積極的な取り組みを見せてもらえればと思います。
そういった出場者がいるなかで、初めてコンクールに出場したと見受けられるケースや、「まだ専門的な音楽教育を受けていないけど、今後の頑張りにつなげたいから受けてみた」という出場者層もいらっしゃいましたが、「弾くのが好き」という思いが演奏の積極性につながったのか、単純な演奏レベルの比較を超えた結果を出すケースもありました。
コンクールを主催する事務局の立場では、そういった出場を大いに歓迎しており、その後押しをしていきたいとのことでしたが、「ピュアな心意気」とは関係なく順位付けがなされる現実についても考えを巡らせており、その結実として次回、コンクールにまだ出場したことがない子どもたちを対象とした「ファーストステップ部門」を併催することが決まりました。
印西国際音楽コンクールは隔月開催のかたちをとり、アップデートの頻度も高く、未来の演奏家、音楽愛好家の皆さまの後押しとなるコンセプトを第一としておりますので、出場者の皆さまへの応援とあわせて、このコンクールを暖かく見守っていただければ嬉しく思います。
さて、7月には前述のファーストステップ部門・一般部門・プロフェッショナル部門の3つを加えたかたちで、全5部門による第2回印西国際音楽コンクールが開催されます。すでに申込みを受け付けた出場者の中にはユニークな演奏形態をとる方もいたとのことで、また多様な演奏を聴けることを期待しながら、次回の審査会を待ちたいと思います。
3月に予定される印西音楽祭まで、入賞者の生演奏を聴くことはお預けとなりますが、よりいっそう深化した演奏を印西市民の皆さまと一緒に味わえることを大いに期待しております。
印西音楽協会 理事
井後 優弥